2024年新形式!英検準1級ライティング要約の練習問題と解き方のコツ

試験の変更内容と新形式の特徴

理解できるだけでなく、表現できる英語へ

2024年第1回の英検から、英検準1級の問題形式が大幅にリニューアルされました。この変更について、日本英語検定協会は出題形式の変更内容出題例を公表しています。

出題分野変更点
単語問題7問削除
長文問題3問削除
英作文問題1問追加(要約問題を新設)
二次試験(スピーキング)受験者自身の意見を問う質問(No. 4)に話題導入文を追加

出題の内容は変わりますが、英検準1級の試験時間は90分のまま変わりません。さらに、英検準1級ではスピーキング問題にも変更があるので、別途確認しておきましょう。

リーディングとライティングの融合問題が新設

● Instructions: Read the article below and summarize it in your own words as far as possible in English.
● Suggested length: 60 – 70 words
● Write your summary in the space provided on your answer sheet. Any writing outside the space will not be graded.

日本英語検定協会

この問題文からわかるのは、与えられた文章を正確に読み、自分の言葉で要約することが必要ということです。意見論述問題とは異なり、提示された文章をまとめることになります。内容を慎重に把握しましょう。

問題文は、英検準1級レベルの語彙が多く詰まった文章ですが、既存の長文問題と比べると難易度は少々低いといえるでしょう。準1級で要約する語数は60字〜70字と短いです。書きすぎないように、必要最低限の内容をコンパクトにまとめる練習をすることが重要です。

評価観点は意見論述問題と同じ

評価観点は(1)内容(2)構成(3)語彙(4)文法、の4つです。
各観点ごとに0-4点の5段階で評価され、満点は16点です。

項目内容配点
内容課題で求められている内容(意見と理由)が含まれているかどうか0-4 点
構成英文の構成や流れがわかりやすく論理的であるか0-4 点
語彙課題に相応しい語彙を正しく使えているか0-4 点
文法文構造のバリエーションやそれらを正しく使えているか0-4 点

後述する日本英検協会の説明によると、語彙のレベルは、少なくともB1〜B2レベルが必要です。
また、準1級レベルになると「かなり正確な文法が求められる」とされています。多少の間違いは許容されますが、「そういう語順だと別の意味でとられてしまう」「肯定と否定が逆に伝わってしまう」といったミスは避けるべきです。

特に文法に関して、「どの程度文法を重視すべきか」という質問をよくいただきます。
一つの回答は、「文法は正しく意図を伝えるために必要不可欠」ということです。しかし、100%正しい文法で書いたり話したりする必要はありません。私たち日本語話者も、誤った日本語を使うことはよくありますよね。

とはいえ、意図が誤って伝わってしまうような状況を避け、伝えたいことが正確に伝わるようにするには、文法学習を避けて通ることはできません
多少のミスを気にしすぎる必要はありませんが、「何を言いたいのかがわからない」という状態にならないように、普段から注意して練習しましょう。

問題の解き方 5つのポイント

要約する5つの手順として、日本英検協会がとても丁寧な動画を公開しています。

実際、この動画の解き方を頭に入れておくだけで、十分に合格点をとれるといっても過言ではありません。受検者はこの動画を必ず視聴しておきましょう。以下では、この動画で紹介されている問題の解き方の5つのポイントを具体例とともに紹介します

安河内哲也先生(一般財団法人実用英語推進機構代表理事)は、(1)主張を特定する(2)具体的な用語を抽象化する(3)論理性の構築(4)冗長部分の排除(5)完結性の確認、の5つのポイントを紹介しています。

公式に発表されている問題の解き方について、具体的な内容を見ていきましょう。

(1)主張を特定する

まず、文章全体で筆者がいちばん言わんとしていることは何かを捉えましょう
主張の軸がわかってはじめて正確な要約ができます。つまり、主張の正しい特定が最初のカギです。

(2)具体的な用語を抽象化する

数字や固有名詞は、一般的・抽象的な表現に言い換えましょう

例えば、動画内では”increased by an average of 70 percent”を”dramatically increased”と言い換えることが紹介されています。このような言い換えを、普段から練習しましょう。

固有名詞一般的・抽象的な表現
Amazon Rainforest in South America, Sahara Desert in Africamajor natural landscapes
Paris’s Eiffel Tower, New York’s Empire State Buildinglandmarks in major cities
the Vatican City in Italy, The Forbidden City in Chinahistorical sites

このようなパラフレーズを練習するには、同義語・類義語辞典やコロケーション辞典を使ったり、実践的な演習をする必要があります。詳しくは「【英検/IELTS/TOEFL対策】パラフレーズ力を鍛えるアウトプットの方法5選」の記事をチェックしましょう。

(3)接続詞で論理性を示す

文章をわかりやすくするためにディスコースマーカーを使いましょう
パラグラフを常に意識して、本文と同じ論理構造を維持することが推奨されます。

接続詞のカテゴリー具体例
逆説・対比を示す接続詞But(しかし)、Yet(しかし)、However(しかしながら)、On the other hand(一方で)、Nevertheless(それにもかかわらず)、Although(にもかかわらず)
時間の経過・同時進行を示す接続詞When(〜する時)、While(〜する間に)、Meanwhile(その間に)、During(〜の間に)、As(〜する時に)、At the same time(同時に)、Simultaneously(同時に)
追加・補足を示す接続詞Also(また)、Moreover(さらに)、Furthermore(さらに)、Additionally(さらに)、In addition(加えて)、Besides(その上)、Too(〜も)
結果・原因を示す接続詞Therefore(それゆえに)、Consequently(その結果)、Thus(したがって)、Hence(それゆえに)、As a result(その結果)、Because(なぜなら)、Since(〜だから)、Due to(〜が理由で)

もっと詳しくディスコースマーカーを確認したい方は、ディスコースマーカーをマスターを読んでください。

(4)冗長部分を排除する

60〜70語の単語数で必要な情報を過不足なく要約するためには、同じ内容の繰り返しをできるかぎり排除し具体例は必要最低限に絞ることが重要です。
これにより、主張を説明するうえで本質的な情報をよりわかりやすく伝えることができるようになります。

(5)完結していることを確認する

もとの文章を読んだことがない人にも、話の要点が伝わるような文章にしましょう
つまり、それ要約文それ自体で論理的に完結しており、これを読むだけで筆者の主張が伝わる文章でなければいけません。

実際に解いてみましょう

では、具体的にどのように要約文を作ればいいのでしょうか。

実際の試験問題では、過去または現在における何らかの社会的課題が具体的な事例とともに論じられる可能性が高いといえます
そこで、戦略としては、まず課題は何であるか、なぜそれが問題なのかを把握することが重要です。さらに、現在または今後の課題を特定するように心がけましょう。

この3つのポイントを念頭に置いて、下記の文章を約2~3分で読んでみてください。
何がどうして問題なのか、解決に向けた今後の課題は何かを自分で考えてみましょう。

練習問題

Many rural communities in the United States face challenges in accessing high-speed internet. This lack of connectivity hinders educational opportunities, economic development, and even access to healthcare. In an effort to bridge the digital divide, some states, like Montana and Colorado, have implemented initiatives to expand broadband access. These programs often involve partnerships between local governments, internet service providers, and non-profit organizations. They focus on building new infrastructure, like fiber optic cables, in underserved areas and offering subsidized internet plans to low-income residents.

Proponents of these initiatives argue that reliable internet access is no longer a luxury but a necessity. It allows students to participate in online learning platforms, entrepreneurs to run businesses remotely, and residents to access telehealth services. Studies in Montana have shown promising results, with increased internet penetration leading to a rise in high school graduation rates and a boost in the number of home-based businesses.

However, critics point out the challenges of implementing these programs. The vast distances and sparse populations in rural areas make building new infrastructure expensive. Additionally, some internet service providers are hesitant to invest in these regions due to potentially lower profits.

KotobaNerds English

(1)一般的な課題は何か

アメリカの農村部で、高速のインターネットアクセスが十分に普及していないという問題が読みとれます。

(2)具体的な問題と現状は何か

インターネットアクセスが十分でないことにより、教育の機会、経済的な発展、そして福祉へのアクセスが妨げられています。これを解決するため、政府やプロバイダー、NPOなどが協力して新しいインフラやサービスプランを作っています。これにより、高校の卒業率が高まり、在宅ビジネスが増加したという研究結果が出ています。

(3)今後の課題は何か

しかし、田舎の広大で人がまばらな土地でそのようなインフラを作ることは、多額の費用を要するといいます。さらに、プロバイダーはあまり利益が見込めないことを理由として、これらの土地へ投資することに乗り気ではないようです。

解答例①

The digital gap in rural America limits opportunities in education, business, and healthcare. Some states fight this by building infrastructure and offering subsidized internet plans through partnerships. Supporters argue reliable internet is essential, and governments’ efforts show promise. However, building infrastructure in sparsely populated areas is expensive, and internet providers are reluctant due to potentially lower profits. (67 words)

要約文は本文の主要なポイントを簡潔にまとめており、全体の構造をよく反映しています。教育、ビジネス、医療の機会が制限されていることや、州の取り組み、インフラ構築の費用問題、インターネットプロバイダーの利益低下への懸念を効果的にカバーしています。
課題に対する要約として非常に効果的で、読み手に問題の全体像をわかりやすく伝えています。

解答例②

Lack of high-speed internet hinders rural communities in the US. Some states address this digital divide with initiatives involving partnerships to build infrastructure and offer affordable plans. Proponents see internet as a necessity for education, business, and healthcare. Studies show positive outcomes, but challenges include high infrastructure costs and hesitation from internet providers due to lower potential profits in rural areas. (61 words)

文法は正確で、語彙のレベルも適切です。特に「digital divide」や「initiatives」などの用語を使い、内容が明確に伝わるように工夫されています。「hesitant」を「hesitation」に言い換えるなど、語彙の深い理解も伺えます。論理展開も明快で、州の取り組みやその効果、課題を順序立てて説明しています。
よくまとまっており、端的な要約として効果的です。

解答例③

In many rural areas in the US, the lack of high-speed internet hinders education, business, and healthcare. To address this, some states are implementing initiatives to expand broadband access. These programs often involve partnerships to build new infrastructure and offer affordable plans. Proponents argue that reliable internet is essential, and studies show positive outcomes. However, challenges include the high cost of infrastructure and the limited incentive for internet providers. (69 words)

元の文章の論理構造を上手く反映しており、「To address this」や「These programs」などの指示代名詞を効果的に使って表現しています。準1級のレベルに適した語彙が使われていて、文構造のバリエーションも良好です。
全体として、問題を簡潔にまとめ、明確に伝えている点が素晴らしいです。

論理的に読み、表現できる力を鍛えよう

今回紹介した解法ステップは、すべての問題に適用できるとは限りませんが、文章を論理的に理解し解釈するのに有用です。この読み方を習得すれば、出題形式が異なる文章でも大きく外れることはないでしょう。

さらに、このような練習は試験対策だけでなく、本質的には「英語を自由に使う」スキル、さらには「言葉を自由に使う」スキルを向上させることにつながります

英検は、私たちの英語学習をサポートしてくれるバランスの取れた試験ですが、受検者の皆さんの最終的な目標は合格のその先にあるはずです。
英語学習には「こうしなければならない」という唯一の方法はありません。困ったときはサポートを求め、一つの方法に固執しすぎずに、まずは自分のやりたいように取り組んでみましょう!

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